ピラティスを続けた方から、よくこんな声が出ます。
- 姿勢が“勝手に”良くなる感じがする
- 肩の力が抜けて呼吸が深くなった
- 片側だけ重い感じが減った
- 首や腰の違和感が出にくくなった
- 動きがスムーズで疲れにくい
これらは「筋肉が強くなった」だけでは説明しきれないことがあります。
背景にあるのは、無意識に姿勢や力加減を整える脳の仕組みが働きやすくなること。
その説明に使えるキーワードのひとつが、脳幹の PMRF(橋延髄網様体:pontomedullary reticular formation) です。
1. PMRFとは何か:体の“自動調整”に関わる脳幹のしくみ
PMRFは脳幹の網様体の一部で、日常動作の土台になる
- 姿勢を保つ準備
- 筋肉の力加減(力みすぎ/抜けすぎ)の調整
- 動作の切り替え(立つ→歩く、右→左など)
- 覚醒・注意(集中できる姿勢、ぼーっとした姿勢)
といった「意識で頑張る前の調整」に関わると考えられています。
ここで大切なのは、PMRFは“単独のスイッチ”というより、脳・脊髄・感覚入力(視覚、前庭、固有感覚など)とつながりながら働く、自動調整の一部として理解するのが自然、という点です。
2. ピラティスがPMRFと相性が良い理由(結論)
ピラティスは筋肉を使う運動でありながら、同時に
- 呼吸
- 姿勢(アライメント)
- ゆっくり正確な動作
- 左右差の認知と修正
- 反復とリズム
- 注意(集中)
を一つのレッスンの中で扱います。
これは、PMRFが関わるとされる「姿勢・力加減・切り替え・注意」の要素を、安全な負荷で繰り返し練習できる構造になっている、ということです。
3. PMRFとピラティスの関係を、5つの視点で深掘りする
① 呼吸:PMRFに影響しやすい“状態”を整える入口
呼吸が浅い・速い状態が続くと、体は防御的に固まりやすくなります。
すると動作は「スムーズ」より「力み」で成立しやすくなり、首肩や腰に負担が集まりやすい。
ピラティスが最初に呼吸を重視するのは、筋肉を鍛える以前に
“体が整いやすい状態”を作るという意味でも理にかなっています。
特に重要なのは「吸う」よりも、まず 吐けること。
吐けると、過剰な緊張が抜けて、姿勢や動きの微調整が起きやすくなります。
② アライメント:姿勢の基準点があると、無駄な力が減る
PMRFの説明でよく使えるのが「姿勢の土台」という視点です。
骨盤・胸郭・肩甲帯・頭位などの基準が崩れていると、
手足はそれを補うために余計な力を使います。
ピラティスは、動作を始める前に「基準点」を整えます。
この基準点が揃うほど、
- 肩がすくまない
- 腰が反らない
- 股関節が詰まりにくい
- 手足が軽く動く
という変化が起きやすい。これは筋力というより、力の配分が変わった結果として説明できます。
③ 「ゆっくり正確」:神経が学習できるスピード
うまく動けていない人ほど、速い動きや高負荷で
- 代償(肩をすくめる/腰を反る/片側に逃げる)
- 息止め
- 左右差の固定化
が起きやすくなります。
ピラティスの特徴である「ゆっくり正確」は、代償を減らし、
“良い動き”を神経に覚えさせるのに向いています。
結果として、PMRFに関わる「姿勢の土台」「切り替え」「力加減」が整いやすい、という説明ができます。
④ 左右差への介入:PMRFの乱れは“左右差”として出やすい
ピラティス中に出る典型的な左右差は次のようなものです。
- 片側の肋骨が広がりにくい
- 片側の股関節が詰まる
- 片側の肩が上がる
- 片側だけ腹筋が入りにくい(または入りすぎる)
- 動くたびに片側へ体が寄る
これらは筋力差だけでなく、感覚入力と力加減の問題で起きることが多いです。
ピラティスは、左右差を「見える化」しやすく、負担をかけずに修正しやすい。
その結果、PMRFが担うとされる“無意識の調整”が働きやすくなる、という流れで説明できます。
⑤ 反復と切り替え:PMRFは「動作の切り替え」に関わりやすい
ピラティスには、体幹を安定させながら手足を動かす反復運動が多くあります。
例)
- デッドバグ(仰向けで体幹を保ち四肢を交互)
- シングルレッグストレッチ(左右交互+呼吸)
- レッグサークル(骨盤を静かに保ち股関節を分離)
- ロールダウン/ロールアップ(脊柱の分節+呼吸)
これらは“筋トレ”というより、
体幹を保ち、余計な力を抜き、切り替えをスムーズにする練習として価値が高い。
その点で、PMRFの説明(姿勢・力加減・切り替え)と非常に相性が良いと言えます。
4. PMRFが整ってきた時に出やすい変化
ピラティスでPMRFが整ってきた時に、体感として出やすい変化は次の通りです。
- 立っているだけで疲れにくい
- 呼吸が自然に深くなる
- 肩・首が軽い(力みが減る)
- 腰が反りにくく、脚が出やすい
- 左右差が減り、動きが滑らか
ポイントは「鍛えた」より「整った」という表現がしっくり来ること。
この“整う感覚”の説明にPMRFは使いやすい概念です。
5. 自宅でできる:PMRFを意識したピラティス的3ステップ(3分)
最後に、誰でも安全にできる流れを紹介します。
① 呼吸(1分)
仰向け膝立て。
鼻で吸い、肋骨が横に広がる感覚。
口から長く吐き、首肩をゆるめる。
② 骨盤コントロール(8回)
骨盤を小さく前後に転がし、
腰を反らしすぎず丸めすぎず「真ん中」を探す。
③ 交互マーチ(30〜60秒)
仰向けで脚を1〜2cmだけ交互に浮かせる。
「1・2、1・2」と一定リズム。息は止めない。
この流れは、ピラティスの基本(呼吸→姿勢→統合)を短時間で再現し、
PMRFの説明(姿勢・力加減・切り替え)に繋げやすい内容です。
注意点(安全のため)
- 痛みが増える、しびれが強くなる、めまいが強い場合は中止
- 強い痛み・しびれ・麻痺、急な症状がある場合は医療機関へ相談
- 目的は追い込むことではなく「整えること」
まとめ:ピラティスは、PMRFが働きやすい条件を作りやすい
PMRFは、姿勢の土台・力加減・切り替え・注意といった「自動調整」に関わる脳幹の仕組みの一部です。
ピラティスは、呼吸・アライメント・ゆっくり正確な反復を通じて、
PMRFが働きやすい条件を作りやすいのが大きな価値です。
「鍛えているのに不調が残る」「左右差が抜けない」人ほど、
まずはピラティスで“整える”ことが健康づくの近道となるケースがありますので、ご参考になさってみてはいかがでしょうか。


